1.ツナマヨと再会したこと
ぼんやりとXを眺めていたら、こんなポストが目に入った。
前時代的な指導方針のドッジボールチームに所属していた投稿主が、「ツナマヨネーズ」というチームに敗北したというぼやき。そこそこバズっていて、今では5万くらいのいいねがついている。わけのわからない精神論的指導を受けてきたチームが、わけのわからないふざけた名前のチームに敗北したのが皮肉で面白いということなのだろう。
しかし僕はこの面白さがわからなかった。ツナマヨネーズを知っていたからである。ツナマヨネーズ(通称ツナマヨ)が山梨を代表するドッジボールの強豪であることを知っていたからである。そして、小学生のころ友だちと一緒に出場したドッジボール大会で、僕たちのチームがツナマヨの2軍か3軍かにボコボコにされた記憶を、たまたま目にしたこの投稿が改めて呼び起こしてくれたからである。
2.ゲルツェンの本を読んでいる人と隣同士になったこと
ゲルツェンというロシアの思想家がいて、今年はその著作が岩波文庫から何冊も出るという(ニッチな界隈では)奇跡的な一年であった。
その中の一冊を読みながら山手線に乗っていると、隣の席に初老の男性が乗ってくる。男性は汚れたリュックサックから古い本を取り出して開く。飛蚊症の視界のように黒い点が散らばっているその紙面を覗き見ると、そこにはたしかに「ゲルツェン」なる文字が書かれている。
今年がゲルツェンにとって飛躍(失礼?)の年であったとはいえ、あくまでそれはきわめて狭いサークル内での話である。電車の中で本を読む人間が並ぶ確率もそう高くはないことを考えると、その二人が同じロシアの思想家をめぐって読書に励んでいたのは途方もない奇跡というほかない。
3.ブックオフで買った本にルネの領収書が挟まっていたこと
ブックオフで、大塚英志という批評家・マンガ原作者の『キャラクターメーカー』という本を買う。
購入からしばらく経ってその本を開いてみると、レシートが一枚ひらりと落ちてくる。なんの気無しにその内容を確認すると、そこには「京都大学生活協同組合 ショップルネ」と書かれている。
大学を卒業して以来、二年近く東京に住んでいる。熊野寮に住んで京大に通っていたことなど遠い昔の記憶……というわけではないのだが、まあ時間としてはそれなりの期間がすぎてしまった。
もちろんこの本を購入したのも東京の店舗である。京大から遠く離れた規模も大きくないブックオフの一店舗で、再びこの名前を目にしてひどく驚いた。
レシートを見返すと2020年の夏に購入したとある。この本の姉妹編ともいえる『ストーリーメーカー』なる一冊を僕が買ったのもそれくらいの時期であり、たしか購入場所もルネであった。