今年の三選:小説、アニメ、音楽(荒砥)

季刊C12 vol.3

1.マルコ・バルツァーノ著、関口英子訳『この村にとどまる』新潮クレスト・ブックス、2024年。

 個人的に外れがない(とされている)新潮クレスト・ブックスからの一冊。イタリアは南チロル地方に住む女性が生き別れになった娘に送る手紙という形式をとった物語。これがどういった話か、どこが面白いか、ということは京大生協が出している書評雑誌『綴葉』4月号に載せたのでそちらの方を読んでほしい。

https://www.s-coop.net/about_seikyo/public_relations/images/teiyo-426.pdf

私事になるが、今年度からその『綴葉』で編集委員を務めており、本書が書評デビューだったので思い入れがある作品だ。この文章を読んでいる人で関心があればぜひ『綴葉』を読んでほしい。ほかの人が専門書から新書、小説までいろいろと素敵な書評を書いている。https://www.s-coop.net/about_seikyo/public_relations/

いままで文章を書くという経験自体に乏しかったのだが、『綴葉』やこのC12on web等々を通して文章を書くことに対する抵抗感が薄れてきたようにも感じる。こういった機会が与えられていることに感謝したい。

2.「響け!ユーフォニアム」シリーズ (アニメ・小説)

 今年の春にアニメ第3期を放映していた有名作品。去年末ごろからアニメを鑑賞し始め、原作小説もすべて購入した。amazon primeで視聴可能。久々にはまったアニメで、2周以上はしたと思う。

 「ユーフォ」には個人的な思い入れがある。高校2年生のころ、京大のオープンキャンパスを訪れるために一人で京都に来ていた(8年前である。時が流れるのは恐ろしく速い)。そうは言ってもオープンキャンパスは口実みたいなもので、実際に京大構内に滞在していたのは2時間かそこらだった。そのほかの時間は一人ゆっくり京都観光をして過ごしていたのだが、そのなかで平等院に行くため京阪に乗って宇治に着いたとき、「ユーフォ」アニメの張り紙があったのを覚えている。そこで「ユーフォ」の存在を知り、この前まで視聴しなかったもののずっと記憶の片隅にあった。

 ここでいろいろと魅力を語り始めるとオタクっぽくて嫌なのであまり詳しくは語らないが、絵がきれいなのと青春ものっていいいなと思わせてくれる作品だった。誰かが何かを一生懸命やっている姿というのは、(それが的を外していない限り、いや、時には的外れだったとしても)美しいものだと思う。小説版を読むと登場人物たちの心情なんかがよりはっきり分かるのだが、みんなしっかり考えていて慄く。自分が高校生のころなんて何も考えずに過ごしていたような気がする。

3.凋叶棕『Δ』

 オタクミュージック。今年のapple music履歴で一番再生時間が多かったアルバム(5000分くらい聴いているらしい)である。東方projectの二次創作音楽。中高の頃、東方にはまっていてそのころ好きで聴いていたサークルの作品。東方自体はいまはもう全然分からないのだが、このサークル(および代表者が別名義でやっているもの)はいまでもちょいちょい聴いたりする。物語要素の強いアルバムで、音楽を聴いているだけでは分からないストーリー(アルバムのブックレットにいろいろ書いてある)が様々ある。このサークルの作品を聴いていると、中高のオタク的なものにはまっていた時代を思い出してノスタルジックな気持ちになる。あるいはノスタルジーを感じているのは物語世界そのものかもしれないが。

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