1. 岸政彦 (2015), 『断片的なものの社会学』, 朝日出版社
5月、教職課程を取るのだと意気込んだものの、なぜだか授業中に耐えられなくなって早退し、がっくりしながら附属図書館で手に取った本。柔らかで、静かで、優しい文章に癒された。
現在、生活史調査という形でゼミ論を書いているのも、私の書く物語が淡々とした調子とほのかな題材を取るようになったのも、共感はできずとも相手の話に耳を傾けることを心がけるようになったのも、この本を読んだから。
2. ミラン=クンデラ著, 池澤夏樹訳 (2008), 『存在の耐えられない軽さ』, 河出書房新社
8月、世界文学全集を読もうの読書会で取り組んだ本。あまり長い小説を読むのが得意ではないので、1人ではきっと手に取らなかった。機会があってよかった。
これを読んで、「フィクションって面白ーい!」となり、自分でも何か物語を書いてみたくなった。今年の下半期、音楽よりも文筆に重きを置くようになったのはこの本を読んだから。
3. 内田義彦 (1971), 『読書と社会科学』, 岩波書店
11月、授業のために読んだ内田義彦さんの『社会認識の方法』におけるホッブズの情念論がめちゃ面白かったですと研究室の先生にお伝えしたら、おすすめしてくださった本。
社会科学の著作にしても、クラシック音楽の楽譜にしても、丁寧で忠実に読むことなしに読み手や演奏者の個性など出てこないのだと、逆に、その読みに耐える強靭さを持つものこそが立派な「古典」なのだから、作者を信頼して読み込みなさいと言われた。大事にしたい心構えだと思った。