ー熊野寮での楽しかったエピソードを教えてください。
楽しかったのは、やっぱ人と喋ることかな。
ー具体的なイベントよりもそっちなんですね。
イベントも色々あったけど、あれもやっぱり、人と関わることとか、繋がることの楽しさの延長線上にあったもので、いろんな人と遊べたのが一番楽しくて。その上で、特にC12の存在が大きかったね。
自分の部屋は自分1人の空間で、コンパは頑張って社交性を発揮して新しいところに出て、刺激に触れる空間であって。その中間にC12談話室があって。自分1人だけの空間ではないけれど、そんなに気を張らなくてもいいっていう、ちょうど良さがあった。談話室に寄りつつ、コンパにも顔を出して、バランスをとることで楽しめたと思っています。
ー”がみん”さんとの談話室エピソードといえば、アメフト鑑賞ですね。談話室から盛り上がっている人の声が聞こえるな、パーティーでもやっているのかと扉を開けると、談話室のスクリーンを使って、”がみん”さんが一人でアメフトを見ている (笑) 。そこで私も関心をもって、アメフトについて教えてもらって……。楽しい思い出ですね。
いやー、楽しかったね。自分のプライベートなところを、ある程度オープンにできる場所が談話室だったなと思ってて。談話室って、自分をよりオープンにさせてくれる空間というか、自分というものがちょっと拡張された空間みたいで面白いところだよね。
どうしても、普通の学生やってて誰か人と遊ぶってなったら、自分をちょっと作っちゃうところがあって……。キャラとかね。どう喋ろうとか、身構えちゃうとか、考えちゃうことってあるけど、そこら辺を、ないわけじゃないにしても、よりオープンに人と喋ることができる場所が談話室やったなと思っていて、それが面白かったね。不思議な経験でした。ただ、談話室に居すぎたなと思ってて…
ー居心地が良かったなら居すぎたっていいと思うのですが、そこに引っかかっているんですね。
ちょっと居過ぎたっすね。もっと外に出たかった。2年目って大概そうだけど、談話室に引きこもってしまったね。なんかね、全談話室に遊びに行けるような人間になりたかったんだよな、本当は。俺は最初、他のブロックの談話室に遊びに行ってたんだよね。最初はC12に人がおらんすぎておもんなかったから。しばらくしてからC12に遊びに行ってって感じで。
元々の入りとしていろんな談話室に行って、気分によって遊ぶ場所を変えるみたいなスタンスだったから、いろんな談話室に行くことに抵抗なくて。コンパとかで知り合った他のブロックの人経由で、いろんな談話室に顔を出して遊びに行けるような存在になれたら、楽しいんじゃないかなと思ってたんやけど、結局あんまやらんかったね。
ーなんで引きこもってしまったんでしょうね。単純にC12の居心地が良かったみたいな話なのか、頑張って他のブロックへいくことに億劫さを感じたのか。それらが混じり合ってそうなったって感じですか?
まさしくその通りだと思うわ。やっぱり談話室によって空気感って違うし、誰かしらのプライベートに入り込む形になるから、その場の空気を重視しないといけないし、大事にしないといけない。だから、やっぱり最初は気を使うよね。流石に何のアポもなく身一つで入っていくのは難しいから、誰かと知り合って、 「そっちの談話室でなんかやろうや」みたいに声かけなきゃいけない。それがめんどくさくなったって感じかな。
ー仕方ない面もありますけどね。
ありますね。でも2年目になって、特にC12の居心地のよさが増すにつれて、そこから抜け出すのが難しくなったね。
ー全寮規模のイベントに活発に参加されている印象を抱いていたので、引きこもってしまったという自認は意外です。
いやー、やっぱりもっとできたなあと、ずっと思ってます。より強くなりたかったですね 。もっと他の談話室に行きたかった……。やっぱり熊野寮の一番の面白ポイントって、いろんな人がいるところだと思ってるから、いろんな人としゃべれるようになった方が面白いと思ってたんだけど、ちょっと甘えてしまいましたね、最後は。
ー「面白い」っていうのは、自分の生き方 として、そっちの方がより楽しいということですか?
うーん……、そうだね。そうだし、これは熊野寮に限らず感じることなんだけど、自分の全く知らない人、それぞれの20年分くらいの人生が、自分が生きてきたのと同時並行でそこにあったっていうのが、ちょっと気持ち悪いというか、気味悪いというか、恐ろしくて。
自分は世界のことを全然知らないんだなって感じるのね。自分の知らない世界、生活がいっぱいあるんだなっていうのを感じるのが、ちょっと怖くて、それは都会の恐ろしさでもあるんだけど。それを解消するには人と喋るしかないでしょうと。知るしかないよね。あと、いろんな生き方を知るほうがね、面白いとは思うね。もしかしたらどっかにアメフトファンもいるかもしれんしね。
ーそうですね。
いやそう、表に出てこないだけでね、 熊野寮にいたんだよね。いやー、あの人とももっと絡みたかったな。
ー確かに。もう少し外に出ていたら、アメフトファンに出会えていたかと思うと……
もっと面白い出会いがあったかもなって思っちゃうね。(つづく)