熊野寮と大学院(Haruhi)

季刊C12『C12』

私は、修士2回生になる今年度より熊野寮での生活を始めました。ここでは自己紹介を兼ねて、大学院生の立場から「大学院と大学自治」について感じていることを書き連ねたいと思います。

私は、京都大学附属天文台 花山天文台(山科区)で定期的に開かれる一般向けの天体観望会で、講師としてアウトリーチ活動に関わっています。この花山天文台は、既に研究機関としての役目を終え、現在は学部生の教育や、一般開放し普及活動に使われています。ところが、近年は予算の削減により財政的苦境に立たされており、クラウドファンディングの実施や、民間企業から寄付を受け付けるなどしてなんとか存続している状況です。

そんな場所で、天体観望会にやってくる一般の方々(およそ半分は小中学生です)に講演をし、交流して実感するのは、大学の外でいかに味方を増やすかということです。

研究機関としての大学院の特性上、大学の運営にまつわる裏話が私の耳にも色々と入ってきます。時には、この国の研究者の行く末に暗澹たる気分になることも少なくありません。大学院生や研究者は、大学(とその背後にいる国)に縛られています。牧歌的な時代は終わり、大学院も厳しい管理の下に置かれつつあります。

こうした窮屈で希望の見えない状況を打破するには、兎にも角にも大学の外に味方を作らなければいけません。アウトリーチ活動はその一環です。熊野寮でも、くまのまつりなどを通じた地域との連帯を重視しており、寮の外に味方を作ろうと努力しているものと認識しています。

そしてこれは、大学自治の賜物である熊野寮の恩恵を受けながら、大学院で研究に従事する私の個人的な信念ですが、味方を作るためになにより重要なことは、大学院生や研究者が、市民、とりわけ将来を担う若者たちの未来に託すに値する研究をできているか、自身の研究にいかに献身(devotion)できるかという誠実さの問題ではないかと思うのです。

本来であれば、大学院生や研究者こそ、大学の自治に積極的に関与していくべきなのかもしれません。大学院という空間で、熊野寮をはじめとする自治寮とは異なる立場から、大学の自治にアプローチできるのではないかとぼんやり考えています。

なんだか堅苦しい話になってしまいましたが、私自身、学部時代は熊野寮祭に参加して寮生と鍋を囲むなど、楽しい時間を過ごしました。今は基本的に大学の研究室にいるので、C12の談話室に行く機会は限られているのですが、C12の方々の愉快な寮生活を、遠巻きながら楽しく眺めています。これからの寮生活でどのような出来事を目の当たりにできるのか、とても楽しみにしています。

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